ホスピス型介護施設が急増している理由と問題点

ここ数年、ホスピス型介護施設が急増している状況です。
株式会社TRデータテクノロジーが示したデータを基にみていきましょう。
ホスピス型介護施設(ホスピス型住宅)の開設数は2019年から増加しており、2023年には61件と過去最多を更新しました。

引用: 株式会社TRデータテクノロジー NEWS RELEASE 2025年1月21日
厚生労働省では在宅介護を推進していますが、末期がんや難病の方、終末期の方など、いわゆる「医療依存度が高い方」の場合、家族の負担はとくに大きいといえるでしょう。
在宅介護が難しくなる場合、家族は施設入居を考えます。
しかし、医療依存度が高い方を受け入れる介護施設は、
- 介護医療院
- 看護師が24時間常駐している有料老人ホーム
などに限られていました。
このような状況の中、新たな選択肢として増えてきているのが、ホスピス型介護施設です。
しかし、ホスピス型介護施設については、運営のあり方に関する問題が指摘されています。
2024年頃には、過剰な訪問看護サービス提供、虚偽のサービス記録作成など、複数の事例が報道されました。
報道された事例は、主に以下のような内容です。
1.不正請求の疑い
看護師1名しか対応していないにもかかわらず、複数の看護師で対応したとする虚偽の記録を作成し、過剰な請求をおこなうケース
2.過剰な訪問看護サービスの提供
ケアが必要がない入居者に対しても訪問看護を実施し、サービス提供回数を不正に増やしている事例
これらの問題は、在籍職員や退職者への匿名取材を基に報道されましたが、実際に不正が行われていたのかは現在事実関係を確認中となっています。
ネット上では「病院からの退院時の選択肢として、ありがたい存在だったために大変残念なニュース」など様々な意見が上がっています。
報道された法人の中には、行政からの監査や指導を受けていない事業者もあり、全てのホスピス型介護施設が不正を行っているわけではありません。
厚生労働省は、こうした報道を受けて、令和6年10月22日付で事務連絡「指定訪問看護の提供に関する取扱方針について|厚生労働省」を発表しました。
また、2026年には診療報酬の改定、2027年には介護報酬の改定が予定されており、訪問看護に関するルールが大幅に見直される可能性があります。
ホスピス型介護施設の運営は、今後も医療・介護の重要な選択肢の一つとして注目されるでしょう。
その一方で、適正な運営が求められ、行政の監視体制の強化や事業者の透明性確保が必要とされています。
そもそもホスピス型介護施設とは?

ここであらためて、ホスピス型介護施設について詳しくみていきましょう。
ホスピス型介護施設とは、末期がんや難病を抱え、回復が見込めない状態であると医師の診断を受けた方が入居できる施設です。
ホスピス型介護施設という名前は正式名称ではなく、運営法人によって異なります。
主な名称を以下に示しました。
- ホスピス住宅
- ナーシングホーム
- 医療特化型有料老人ホーム
- ホスピス型有料老人ホーム
この記事では、ホスピス型介護施設という名称で統一しています。
ホスピス型介護施設の特徴は、一般的な介護サービスに加えて、ホスピスケアを受けられる点です。
ホスピスケアは、死が間近に迫っている方やその家族の苦痛を最小限にする事を目的としています。
ホスピスケアの主な内容は、以下の表のとおりです。
ケアの種類 | 具体的な内容 |
身体的なケア | 病気による症状の軽減 痛みの緩和 (マッサージ、鎮静剤や医療用麻薬の投与など) 食事が困難な方への医療的ケア (点滴や経管栄養など) |
精神的なケア | 病気に対する不安、死への恐怖感などの軽減するためのケア 穏やかな気持ちで過ごせるためのケア (看護師や介護スタッフ、ボランティアとのコミュニケーション) (家族や友人との面会交流) |
社会経済的なケア | 施設入居費や介護・医療費などの悩みへの相談支援 遺言や相続に関する相談支援 (主に医療ソーシャルワーカーが担う) |
参考:ホスピスケア - 01. 知っておきたい基礎知識 - MSDマニュアル家庭版
ホスピスケアの具体的な内容については、以下の記事でも紹介していますので、あわせてご覧ください。
ターミナルケアの基本や類似ケアとの違い・具体的な内容を詳しく解説
ほかの介護施設や医療機関との違い

ここでは、ホスピス型介護施設以外の介護施設および、医療機関(緩和ケア病棟)との違いについて解説します。
1つ目の表は、ホスピス型介護施設と、一般的な介護施設の違いを示したものです。
一般的な介護施設として想定しているのは、介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)や介護付き有料老人ホームです。
ホスピス型介護施設 | 一般的な介護施設 | |
ケアの内容 | 介護サービスに加えて、医療保険を使った訪問看護サービスをおこなう | 介護サービスがメイン |
医師や看護師の配置 | 訪問看護ステーションが併設されている場合が多い 医師の常駐は少ない (訪問診療や緊急時の往診がメイン) | 特別養護老人ホーム 看護師が常駐している 有料老人ホーム 看護師が常駐していないところもある |
日々の過ごし方 | レクリエーション活動や季節の行事を実施しているが、参加は自由 入居者のペースにあわせた過ごし方に重点を置いている | レクリエーション活動や季節の行事などが充実 集団生活を楽しめるような工夫がされている |
一般的な介護施設の特徴について詳しく知りたい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。
【図解あり】老人ホーム9種類の特徴・入居条件・費用をくわしく解説
老人ホームの医療体制とは?充実した施設と選ぶポイントを徹底解説
2つ目の表は、ホスピス型介護施設とホスピス・緩和ケア病棟との違いを示したものです。
ホスピス型介護施設 | ホスピス・緩和ケア病棟 | |
ケアの内容 | 介護サービスに加えて、医療保険を使った訪問看護サービスをおこなう | 治癒が難しいがんや悪性疾患の患者が、最期まで希望通りの生活を送れるように援助する病棟 |
医師や看護師の配置 | 訪問看護ステーションが併設されている場合が多い 医師の常駐は少ない (訪問診療や緊急時の往診がメイン) | 医師や看護師が常駐している |
入居者の居室 | 個室が多い | 相部屋が多い |
ホスピス型介護施設はホスピス・緩和ケア病棟に入院できない方や、受け入れの難しい方の受け入れ先としての一面もあります。
医師常駐の有無や、入居者の居室に違いが見られます。
ホスピス型介護施設のメリット

ホスピス型介護施設のメリットは、訪問看護ステーションの併設により、手厚い医療および介護サービスを受けられる点です。
緊急時には医師や看護師、介護スタッフとの連携により、迅速かつ適切な対応が可能です。
また、居室が個室であることが多く、入居者のペースにあわせた過ごし方を大切にしているために、ゆったりと自分の時間を過ごせます。
本人が安心してゆったりと過ごせるため、家族の身体的および精神的負担を軽減できる点もメリットといえるでしょう。
ホスピス型介護施設の費用
ホスピス型介護施設の費用としてあげられるのは、主に以下のとおりです。
- 居住費
- 水道光熱費
- 食費
- 医療費
- 介護保険サービス費
ホスピス型介護施設は費用が高くなりがちと思われていますが、実はそうでもありません。
その理由は、収益モデルにあります。
ホスピス型介護施設と併設されている訪問看護ステーションに限った話ではありませんが、訪問看護は原則、介護保険下で受けるサービスです。
しかし、特定の疾患をおもちの方は医療保険でサービスを受けられます。
医療保険下での訪問看護は、単価面や訪問回数の面から収益が伸びやすく、施設の安定した売上となるのです。
そのため、ホスピス型介護施設は入居費が定額制のところが多いのが特徴です。
費用は、「施設によって大きく異なる」が答えではありますが、10〜20万円が相場といえます。
上記で述べた「特定の疾患」とは、厚生労働大臣が定める「特定診療科の施設基準等別表第7号」をまとめたもので、具体的に以下のとおりです。
- 末期の悪性腫瘍
- 多発性硬化症
- 重症筋無力症
- スモン
- 筋萎縮性側索硬化症
- 脊髄小脳変性症
- ハンチントン病
- 進行性筋ジストロフィー症
- パーキンソン病関連疾患
- 多系統萎縮症
- プリオン病
- 亜急性硬化性全脳炎
- ライソゾーム病
- 副腎白質ジストロフィー
- 脊髄性筋萎縮症
- 球脊髄性筋萎縮症
- 慢性炎症性脱髄性多発神経炎
- 後天性免疫不全症候群
- 頚髄損傷
- 人工呼吸器を使用している状態
上記の疾患をおもちの方は、医療保険で訪問看護サービスを受けることになります。
このような方にオススメ
ホスピス型介護施設は、末期がんや難病などにより、回復が見込めないと診断されている方にオススメです。
ホスピス型介護施設には訪問看護ステーションが併設されており、医療的ケアにも対応できるため、本人、家族ともに安心して暮らせます。
ホスピス型介護施設への入居を希望する場合は、入院先のメディカルソーシャルワーカーやかかりつけ医、ケアマネジャーに相談してみましょう。
もちろんシニアホームの窓口でもご紹介を行っております。