介護保険の大枠
40歳を超えると、介護保険を支払いますね。介護保険を「使った」ことはなくとも、健康保険は皆さまもお使いになったことがあるでしょう。病院の診察料が3割負担になるのは健康保険によるものですね。では、介護保険はいつ使えるのでしょうか。介護サービスを使ったときに自動的に適用される……わけではないのです。次の2つの手続きが必要です。
- 自治体に介護が必要だと認められる(要介護認定)
- ルールに従って介護サービスを利用する(ケアプラン)
以上の2つを満たしているときだけ、介護保険料が支払われ、介護費用の自己負担が原則1割になります。
なぜ、このような条件があるのでしょうか。それは、本当に介護が必要な方に、正しい金額の介護保険料を支払うためです。
「この人はすごく元気だから、年間●円の介護保険でも十分生活できるね」
「寝たきり状態でたくさんのサポートが必要だ。年間●円を支給しよう」
このような運用をするために、要介護認定という仕組みが活用されています。
要介護認定
自治体から介護が必要だと認定されることを要介護認定と呼びます。これを取得し、ルール通りに介護サービスを使うことで、介護費用の自己負担が原則1割になります。逆に、要介護認定を取得せずにヘルパーさんやデイサービスを使っても、全額が自己負担になります。
要介護認定は無料で取れます。取得するだけで、そのまま使わなくても損はありません。まだ介護が必要ないと思っている方も、要介護認定を取得できる状態であれば、早めに申請をしておくと良いでしょう。
申請対象
要介護認定は原則65歳から申請ができます。とはいえ、お元気な方なら介護はいらないので要介護認定はおりません。目安として、次に該当するような方は申請してみましょう。
- 杖をついて歩くようになった
- 起き上がりがふらつくようになった
- お家の中の移動に手すりを使うようになった
- 買い物で重たいものを持てなくなった
- 75歳を超えたとき
例外として、40〜64歳の方も下記の特定疾病をお持ちであれば申請可能です。
【特定疾病】
- がん(末期)
- 関節リウマチ
- 筋萎縮性側索硬化症
- 後縦靱帯骨化症
- 骨折を伴う骨粗鬆症
- 初老期における認知症
- 進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症およびパーキンソン病(認知症)
- 脊髄小脳変性症
- 脊柱管狭窄症
- 早老症
- 多系統萎縮症
- 糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症および糖尿病性網膜症
- 脳血管疾患
- 閉塞性動脈硬化症
- 慢性閉塞性肺疾患
- 両側の膝関節または股関節に著しい変形を伴う変形性関節症
※特定疾病の中には認知症も含まれます(パーキンソン病)。40〜64歳で身体は元気だけれど認知症の方も、要介護認定の申請が可能です。
なかには「お国の世話になりたくないので、ギリギリになるまで要介護認定をしない」という方もいます。しかし、車椅子に乗るようになるなど介護が必要になってから要介護認定を取得すると、かなりバタバタします。介護が始まったときは、他にもやることが多いのです。また、申請から取得までは1か月ほどの時間がかかります。取得してお金がかかることもないので、早めに申請しておくと良いでしょう。
地域包括センターで申請する
要介護認定の申請は市役所や地域包括支援センターで受け付けています。地域包括支援センターはたくさんありますので、担当地区をインターネットや電話などで調べてから向かうと良いでしょう。
介護を受けるご本人が申請に行けない場合(入院中など)はご家族が代わりに申請できます。ご本人が申請に行けず、ご家族も遠くに住んでいる場合は、地域包括支援センターに申請を代行してもらうことも可能です。まずは連絡してみてください。
持ち物は次の通りです。
- 印鑑
- 介護保険要介護・要支援認定申請書(インターネットから事前に印刷するか、地域包括支援センターにおいてある用紙に記入します)
- 介護保険被保険者証(64歳以下の場合は健康保険被保険者証)
- マイナンバーカード(マイナンバー通知書)
申請が終わったら、認定のための調査が始まります。審査結果がでるまでは1ヶ月程度かかります。……実は申請したら終わりではなく、ここからが本番です。
訪問調査
申請すると、最初に「訪問調査」が行われます。申請者のご自宅に訪問調査員が入室して、心身の状態や日常生活の様子を確認します。ご本人やご家族にいくつか質問も行い、どれくらいの介護が必要なのかを推し量る調査です。
訪問調査員は、市役所の担当者か、指定事務受託法人という行政から介護保険の事務を委託された業者の担当者のみですので、ご安心ください(要介護認定を更新する場合の訪問調査では、訪問介護業者などの有資格者が訪れることもあります)。
訪問調査の内容
生活の様子を観察したり、ご本人やご家族に質問しながら調査されます。
調査内容は次の5種類です。
- 身体機能・起居動作
- 手足に麻痺はあるか
- 関節は動きやすいか
- 寝返りはできるか など
- 生活機能
- 歩行はできるか
- 食事は可能か
- トイレは自立してできるか など
- 認知機能
- 意思疎通に問題はないか
- 居場所を理解しているか
- 短期記憶に問題はないか など
- 精神、行動障害
- 情緒不安定ではないか
- 昼夜逆転していないか
- 突然大声を出したりしないか な
- 社会生活への適応
- 金銭管理に問題はないか
- 薬を正しく飲めるか
- 日常の買い物をするか など
面接のように、回答を準備しておく必要はありません。聞かれたことに、正直に現状を答えれば大丈夫ですよ。
家族が同席することが大切
訪問調査ではご家族が同席し、現状をそっくりそのまま伝えましょう。過大でも過小でもなく、現状そのままです。
良くある話として、普段は杖をついて歩いている人が、訪問調査中は自力で歩いてしまうことがあります。調査員に「生活にお困りないですか?」と聞かれると「大丈夫です」と答えてしまうような形ですね。ご本人の自尊心・プライドや、緊張により普段よりピシッとしてしまい、介護認定が下りなかったり、ずれて認定が出てしまったりするのです。これを防ぐために、日ごろから家族が、あれっと思った行動などの記録を取っておきましょう。「訪問調査のときだけ元気なそぶりをしたので、要介護認定が降りなかった」なんてケースもあります。
ご家族が同席して、現状をしっかり伝えてあげてください。困っていること、できないこと、心配なことも正直に相談しましょう。
主治医の意見書を作成する
訪問調査のあとは「主治医の意見書」を作成します。訪問調査の結果だけでなく、医学的な知見も含めて要介護認定をするためです。
市町村がかかりつけ医に意見書の作成を依頼します。もし、かかりつけ医がいない場合は、市町村が指定する医師の診察をうけて意見書を作成します。
一次判定はコンピューターで実施
要介護認定の審査は2回行われます。はじめに行われる「一次判定」では訪問調査の内容と、主治医の意見書をもとに、コンピューターが判定します。
要介護認定等基準時間が計算され、これをもとに要支援1〜2、要介護1〜5に分けられます。要支援1〜2、要介護1〜5というのは、どれくらい介護が必要かレベルを表したものです。こちらは後で詳しく解説しますね。
二次判定は介護認定審査会で決定される
二次判定では介護認定審査会という会議が開かれ、保険・医療・福祉の専門家たちによって最終の判断が下されます。
ここでも訪問調査のヒアリング内容が使われます。困りごとがあれば調査員にしっかり伝えましょう。
審査結果は申請から30日程度で届く
一次判定・二次判定の審査結果にもとづいて、要支援1〜2、要介護1〜5が決まります。審査が終わると、ご本人宛に「結果通知書」が届きます。
結果の通知は、申請から原則30日以内に届くとされています(地域や状況により、30日を超えることもあります)。
もし、要介護認定がおりた場合は「申請日」までさかのぼって介護保険を適用できます。申請から結果がでるまでに介護サービスをご利用されていた場合は、保険給付の対象になりますよ。
要介護認定が出なかった…不服申し立ても可能
ときには、要介護認定が出ないこともあります。
審査結果に納得できないときは、市役所に相談してみましょう。担当者に問い合わせると、要介護認定が出なかった理由を教えてもらえます。
それでも納得できないときは不服申し立ても可能です。なお、不服申し立てには期限があります。結果通知を受け取った翌日から原則3ヶ月以内に手続きを行いましょう。
要介護認定は「有効期限」があり、更新が必要
要介護認定は、免許証のように更新しなければなりません。自動更新ではありませんので、忘れずに更新の申請をしましょう。
- はじめて介護認定をとった場合は、申請日から6ヶ月で更新
- それ以降は、1年ごとに更新
有効期限が切れると、介護サービスが全額自己負担になってしまいます。有効期限の2ヶ月前から更新の手続きが可能です。
申請した後は、また訪問調査から始まります。このとき、身体の具合がまた変わっていれば、要介護度も変わります。もし、更新時期より前に身体状況に変化があったときは「区分変更申請」を行いましょう。こちらは時期を選ばずに申請が可能です。
介護休暇を活用しよう
要介護認定の申請のためや訪問調査の時は会社をお休みする必要があります。この時に便利なのが介護休暇の仕組みです。前回のコラムでご紹介しておりますので、ぜひご覧ください。
コラム第8回「介護休暇・介護休業を活用しよう」